技術情報
無電解ニッケルめっき上への亜鉛めっきについて
製品の性能や外観に対するニーズが多様化する中で、複合的なめっき処理が求められることがあります。今回は、「無電解ニッケルめっき」上に「亜鉛めっき」を施す処理についてご紹介します。
無電解ニッケルめっきとは?
無電解ニッケルめっき(Electroless Nickel Plating)は、電気を使わずに化学反応によって金属ニッケルを基材表面に析出させるめっき方法です。以下のような特長があります。
優れた耐食性
均一な膜厚(複雑形状にも対応)
高硬度(熱処理による強化も可能)
接触抵抗の低さ(電気接点向け)
これにより、工業部品・電子部品などさまざまな分野で使用されています。
なぜその上に亜鉛めっきをするのか?
一見すると、耐食性に優れた無電解ニッケルの上に、さらに犠牲防食を目的とする亜鉛めっきを施すのは不思議に思えるかもしれません。しかし、以下のような理由から採用されるケースがあります。
意匠性の統一: 他の部品と同じ外観に合わせる必要がある場合
分解性の向上: 製品の設計上、最終的に亜鉛の性質が必要な場合
犠牲防食層の追加: より過酷な環境下での防食性向上
めっき処理上の課題と対応
無電解ニッケルと亜鉛は、めっき処理の性質が異なるため、以下の点に注意が必要です。
1. 密着性の確保が重要
無電解ニッケル皮膜は化学的に安定しているため、通常の亜鉛めっき処理では密着性が不足することがあります。とくにリン含有量が多い場合(高リンタイプ)には、密着不良が起こりやすくなります。
対策:めっき前の活性化処理(酸処理)を最適化
表面を適切に粗化し、アンカー効果を高める
2. ガルバニック腐食(電食)への配慮
無電解ニッケルと亜鉛では電位差があるため、湿潤環境下では局部電池が形成され、電食(電位差による腐食)が発生するリスクがあります。
対策:トップコート処理(クロメート処理やジンクフレーク塗布など)で防食強化
電位差の影響を受けにくい設計を検討
処理構成例
基材(金属)- 無電解ニッケルめっき(5〜10μm) – 表面活性化処理 -電気亜鉛めっき(5μm前後)-クロメート処理(三価など)
このような複合処理により、無電解ニッケルと亜鉛のそれぞれの特長を活かした防食性・意匠性・機能性の確保が可能となります。